2021年11月15日月曜日

サヒメル科学探検隊 第4回を実施しました

  10月24日(日)に、島根県立三瓶自然館サヒメルとの共催で、サヒメル科学探険隊の第4回「大学の研究者と一緒に活動!樹木の葉の成長を観察しよう!」を実施し、演習林スタッフと自然科学が大好きな子どもたちが交流しました。

 午前中の一時間目には三瓶演習林を散策し、山下多聞准教授の話を聞きながら、樹木の葉や芽、葉脈ついて学習しました。

 ヤマグワ、イヌシデ、ミズキ、サルトリイバラ、ウリカエデなど様々な樹木を見つけることができました。子どもたちは葉の形をスケッチしたり、紙の上から鉛筆でこすって写し取ったりして観察しました。

 演習林スタッフに樹木の名前や特徴をどんどん質問し、草花や生きものにも目を向けていく子どもたち。好奇心旺盛で小さくても頼もしい探険隊員たちです!

 さて、午後からは、小豆原埋没林公園の施設に移動して二時間目の授業。創作折り紙が得意な技術スタッフの齊藤と一緒に、三瓶に多いイヌシデの葉の折りたたみ方を折り紙で再現し、芽吹いた時に広げやすい葉の収納方法とそのメリットについて考えました。

 折り紙が大の苦手だという子も頑張って挑戦! 折りあがった葉を用いた実験で、イヌシデの葉の折りたたみ方が、省コストで芽吹き後すぐに光合成を行うのに適していることが分かりました。

 また、この葉の折りたたみが、宇宙開発や産業分野で幅広く利用されている“ミウラ折り”に共通したものであるということも学び、子どもたちはパッと開いてすぐ閉じる“ミウラ折り”に興味津々でした。

サヒメル科学探険隊の皆さん、ご参加ありがとうございました。

(授業では、Ask Nature Japan“葉っぱの折り紙”を参考にさせていただきました)


齊藤の折り紙作品の一部はこちらからご覧いただけます。

https://www.facebook.com/shimane.university.forest/posts/2793914140652663


2021年11月8日月曜日

羊毛作家 笠木真衣さんのお話 第5回(不定期連載)

久しぶりにブログを更新します。羊毛作家 笠木真衣さんのインタビューの続きです。

笠木さんは、ちょうど先日、「中国地域女性ビジネスプランコンテストSOERU」で大賞(中国経済産業局長賞)を受賞されました。おめでとうございました。

第5回SOERU各賞が決定いたしました!


🐑 🐑 🐑 🐑 🐑


-前回のお話では、手洗いの羊毛には草の種などがついていることもありますが、それは毛がよい状態で生地になっているということでもあり、それもまた味でもあるといったお話でした。そうして手洗いされた羊毛ですが、この羊毛はこの後、どうなるんですか。何に使われるのでしょうか。

笠木:あまり具体的な商品開発を考えずに出しちゃったんですけど、まずブランケットにしてみようかなと思っています。あとはベッドカバーとか。とてもあったかいんですよ、純毛で。羊が-25℃の北海道の大地でも寒くないように生えている毛ですから、とてもあったかいんですよ。夫のジャケットにするために、テーラーに出してみようと思っています。あと、カーテンとかですね。


-カーテンもよさそうですね。こういう模様が。

笠木:調湿機能もありますしね。こういうのが入っている生地ってあるじゃないですか。


-そうですね。点々が入っていて自然っぽいな、という感じがする生地がありますね。

笠木:直接肌にこういうのが当たるとチクチクするかもしれませんけど、そういうものでなければいいですよね。

 使い道は何なのかというよりは、私が大量に羊毛を使ってみたかったという欲望から作ったものだったんです。今まで10年くらい羊毛でいろんなものを作ってみたんですけど、すごく楽しかったです、今回40kgの羊毛を出荷した時は。

原料積み

 普通1年かかって1.5kgの羊毛を服地にするくらいの仕事しかできないのに、機械ってすごいなと。これ3ヶ月で上がって来たんです。ミュール紡績機っていうので紡いでもらったんですけど、ほとんど私が手紡ぎするのと同じ工程を機械がやってくれるんです。これ全部で1万mあるんですけど、全部均一ですごいなって思って。

調合中

 逆に手仕事で均一にするってすごい大変なんですよ。機械の凄さ、ありがたみを感じる体験でもありました。たくさんの羊毛がかっこいい生地になっていいなと思ったり、工場の方にいろいろ教えてもらったり、楽しかったですね。ほんと勉強さしてもらいました。

ミュール工程

-小ロットでもやってくれる工場がよく見つかりましたね。普段から他の作家さんの仕事を受けたりしている工場なんですか。

笠木:いえ、前例はほとんどないようです。私も、いいと言ってくださって、それからその工場で作られている糸を実際に買って自分で手織りしてみて、この方の作る糸はすごいウール愛を感じられる、と言うとおこがましいですけど、すごくウールの特性を捉えたデザインで、素晴らしい紡績糸(工場で紡績された糸)だったんですよ。弾力があり、切れず、デザインも色もかっこいい。すごくウールの力が生きてるって感じがしながら織ってましたね。すごく惚れ込んで、すぐ社長さんに電話して、なんでこんなに素晴らしい糸が作れるんですかって聞いたら、「フフッ、そうかい」って笑ってましたけどね。MWっていうイギリス羊毛100%の糸だったんですけど、本当に素晴らしい糸を、手紡ぎでなくて作れる方がいらっしゃるんだと思いましたね。その時まで工業製品を舐めてたと思うくらい、素晴らしい糸でしたね。この方にお預けすれば、いい糸にしてくださるという思いがあって、それから絶対出荷すると思って2年かかって40kgを集めて、それから送りました。
ミュール工程


-それが笠木さんがご自身のサイトに載せていらした会社ですか。

笠木:そうです。
今回の生地については、三河紡毛という紡績会社の方と山栄毛織という会社の社長さんとのお二人で作っていただいた生地です。織った後もいろいろな工程がありまして、縮絨って言って、縮める、フェルト化させるんですけど、起毛させたり、プレスしたり、いろんな工程を経ることで、かなり雰囲気が変わるんですよね。これも私がこういう生地にしたいとお伝えして作っていただいて、とてもツイードらしい自然な風合いにしていただいたと思います。すごく丁寧にしてくださったんですよね。素材も珍しい素材なので、すごく丁寧に進めてくださいましたし、細かく私の意向を聞いてくださって、割りに合わない仕事だったと思うんですけど、紡績会社の方も毛織り会社の方も、とても親切にしてくださいました。羊毛愛がいっぱいのものができました。

(つづく)

2021年7月16日金曜日

羊毛作家 笠木真衣さんのお話 第4回(不定期連載)

(承前)

-今のお話にあった「1万9千頭」の羊というのは、織物のために飼われているとは限らないわけですよね。

笠木:そうですね、99.9%は食肉用です。


-でも、昔はその毛が活用されていたんですね。

笠木:そうです。でも、今は使われていなくて、今回、この生地を作るにあたってめん羊牧場さんに電話で伺っても、やはり困っていると言われました。また、私のように手洗い・手紡ぎでやっている者にとっても、とても質のいいもの、ファーストクラスの羊毛しか使えない。羊毛のいい部分1%ほどだけが使われているんですよね、手紡ぎ愛好家に。あとは布団になったり捨てられたりですけど、最近は布団にはあまり使ってないし、手洗いしかできないし…

-では、アパレルから頼まれた工場などは、羊毛の処理はどうしているんですか。排水処理設備をしっかりしてから、洗っているんでしょうか。

笠木:それは海外で洗っています。洗い済みのものを「スカード」って言うんですけど、スカードを輸入して、それを使っています。私たちが着ているセーターなどは、ほとんどがその洗い済み輸入羊毛を国内で加工して糸にしてできています。


-日本製のウールはほとんどないのですか?

笠木:日本製のウールはすっごくわずかです。


-海外の工場では、日本の基準では使用が認められていない薬剤を使って洗っているんでしょうか。

笠木:外国で洗いが可能なのは、排水をきれいにする高い機械が買えるかどうからしいんですよね。


-日本では、技術的には可能だけど、そんな機械を買っても採算が取れないから買わないということになるのでしょうか。

笠木:そうです。小さな町工場的な洗い工場では、高い機械を導入できなかったから潰れたと言われています。

それか、手洗い方式で薬品を使わずに洗う高い機械を買うかですね。排水を処理する機械って高いですよね。

私、今、手洗いする時はエマールを使っているんですけど、毛はすごく健康な状態で生地になってるんですよ。

羊毛についている小さな草の種などがOKで、それが自然の状態ですよって知ってもらえたら、強い薬品で羊毛を処理する必要がなくなります。植物の細片が多少ついててもいいわって言ってもらえたら、すごい小さな力で加工した羊毛の生地が流通に乗るんですよね。生地はすごく高いので、純度が高いものしか出回っていないですから。不純物が入ったマテリアルが流通してくれれば、もっと優しいのになと思うんですよ。

-これはこれで味だと思うんですけどね。最近、木材でも、「節がある方が木っぽくていい」という人もいますし。

笠木:みんな、この生地を見て、「ゴミがある」って思ったら、普段見ている生地はそれを薬剤で溶かしているって知って欲しいなって思います。「羊だって生きてて、だから漂白されたようにきれいではないの」って思ってもらえたらと思います。


(つづく)


2021年6月11日金曜日

羊毛作家 笠木真衣さんのお話 第3回(不定期連載)

 (承前)


-織物の幅というのは、機械に制約を受けるわけですか?

笠木:そうです。日本で手に入る織り機ですと、洋機(ようばた)だと幅160cmまで織れるものもあります。海外には210cmというのもありますし、アメリカでは3mくらいあって二人で織る機械もあります。

 私が使っているのは、120cm幅と100cm幅、それから60cm幅です。なぜ幅広の織り機が欲しかったかというと、洋服地を織りたかったからです。

 マフラーなどを織ってだんだん慣れて来ますと、違うものも織りたくなって来ます。それで服地、ツイードジャケットやコートを作る生地を織ろうと思いました。

 マフラーは160g、200g、300gの羊毛で作れますが、洋服地1着分を作ろうと思うと、1kgくらいの羊毛を加工しなければならないので、計画がさらに長期化しますし、大掛かりにもなります。

 (持参されたものを示して)これは1年くらいかけて作りました。これを織るためには、90cmの織物を5〜6m織らないといけません。縮絨という加工で縮むので、洋服はだいたい150cm幅、75cm幅の生地で作ります。縮むことを考えると、90cmを織れる大きい織り機が必要だったんです。


-この布で何年分の毛になるのですか?

笠木:これで1年分です。羊の毛は1年で10cmくらい伸びます。そして、1頭で2〜4kg取れます。


-ジャケット1着に何頭分の毛が必要になるのですか?

笠木:だいたい一頭分(3〜4kg)の羊毛が必要になります。洗って、ゴミも脂もない状態で、1.5kg分くらい必要です。羊1頭で1人分のジャケットという感じですので、羊1頭の毛を脱がせてそれを人が着る、というイメージでしょうか。

 織物を始めて3〜4年目くらいに服地を作りました。その後、もっと毛の太いのを使ってラグを作ったり、買って来た糸で織ってみたりしました。

 私は買って来た糸にあまり興味がなく、自分で紡いでいました。色やデザインが好きなウィーバーもいますけど、私はあまり興味がありませんでした。2020年に工場に頼んで生地を作ってみたんです。

 私にとっては、新しい取り組みですね。こういう生地を工場で作ってみてもらいました。ダブル幅で長いです。これが服地になる予定です。


-生地についている点状に見えるものは何ですか?

笠木
:取りきれない草の実などです。ごみ取りは私が手でしました。全部取りきれなくて、残っています。


-これはこれで味がありますね。毛を洗うところまでは笠木さんがされて、糸にするところ、布にするところは工場でされたわけですか。

笠木:洗いは、別の方がしてくださり、手洗いした羊毛を購入しました。これは全部、島根県にいる羊のコリデールの毛です。

 日本のウールの活用について、手洗いで毛を洗ったものを、工場に紡績に出したという話をあまり聞いたことがないので、日本の繊維業界にとっても、珍しい取り組みだと思います。


-普通は工場の人がどこからか毛を調達して来て、加工するわけですか。

笠木:普通はそうなんですけど、今回は自分で用意した素材を加工してもらいました。


-県内の業者ですか?

笠木:県外の工場です。これは、愛知県の尾州地区というところがウールのアパレル生地の産地なんですけど、そこの方にお願いしました。

 紡績糸にも、紡毛糸と梳毛(そもう)糸があるんですけど、紡毛機で作るふくらみのある紡毛糸にしたかったので、紡毛のウール専門のところを2年くらい探しました。個人で受けてもらえる工場さんって、なかなかないんですよ。

 普通はアパレルのメーカーが発注した糸で生地を作られるので、私が個人でしかもロットが40kgという量で頼むと、工場にとっては小さいロットで手間になりお金にならない仕事になります。それでもそれをやってあげると言ってくれた会社があったので、できました。

 出雲市佐田町にいるコリデール種の羊の毛を毎年刈られて、それを洗って紡いで…という活動を10年間続けておられる「メリーさんの会」という婦人会の方がいらっしゃいます。このウールは、そこの方に洗い済みのものを提供していただいて、40kgを集めることができました。
 手洗い済みの40kgって、すごい大量なんですよね。それを集められたことと、やってくれる工場が見つかったことと、織ってくれる会社が見つかったことで、この生地ができました。

 で、この生地が作れるとどんないいことがあるんだろうといいますと、国内産の羊毛の活用の幅が広がるってことなんですよね。日本にいる羊の毛が活用できるようになります。
 日本の羊の毛はだいたいが捨てられています。日本に1万9千頭くらい羊がいるんですけど、その毛は、昔は洗い工場が国内にあったので、使えていたんです。けれど、廃液の規制が厳しくなり、洗い工場が潰れちゃったんですね。羊毛は洗わないと、そのままの状態では使えないので、外国で洗うか手洗いするかしないと活用できないんです。でも、手洗いってすごく手間もお金もかかるので、みんな、それはしなくなり、日本の羊の毛は使えなくなっちゃったんですね。ですので、手洗いで工場に出すのを続けたりできれば、もうちょっと羊の毛を捨てないで済むかなと思って、やってみました。

(つづく)

2021年4月21日水曜日

羊毛作家 笠木真衣さんのお話 第2回(不定期連載)

-笠木さんは羊を飼うところからされているんですね。まず羊の毛を刈って、刈ったものをどこかで洗ってもらうんですか?

笠木:いえ、それも自分で洗っています。
羊の毛には脂とゴミが付いているので、それらを別々の工程で除去します。
脂は、羊の種類にもよりますけど、大体は100℃以内で溶かせますので、45~70℃のお湯に中性洗剤を溶かし、それに浸して、まず脂を溶かし出します。
毛先には泥が付いているので、それを揉み洗いします。

汚れた毛を持って来てみました。

-これは笠木さんが飼われている羊の毛ですか?

笠木:そうです。触ってみられると、ちょっと脂っこいのがわかりますか?


-ラノリンって、これのことですか?

笠木:そうです。毛を触るとネトネトしていると思うんですけど、これこそがラノリン(羊が分泌する脂分)です。

脂の次は汚れとゴミを落とします。毛刈りは1年に1回なので、毛先の方は泥などで汚れています。これも洗います。次に、毛に草の種などがついていますので、これを手で一つずつ取って行きます。

市販の毛、先程お話しましたスライバーやトップにはこういったものがついていないですよね。それは、化炭(かたん)処理といって、強い酸に浸けて、温度を200℃に上げて、次にアルカリに浸けて中和する処理をしたもの、つまり化学的に処理したものです。


-市販のものはゴミを薬品で溶かしてしまっているわけですか。

笠木:そうです。ですので、毛は傷みますので、手洗いの方がタンパク質が良質に保たれるというメリットがあります。

10年くらいかけて、いろんなものを作ってみました。
これが手紡ぎ糸で、こちらが売っている糸(左上の糸)です。強撚(きょうねん)糸です。

初心者の方は最初はマフラーやショールなどを、柔らかいメリノとかポロワスといった種類の羊の毛を使って、首回りに使うものから織ります。


-このような状態になるまでに、どのような工程があるのですか?

笠木:まず、刈り取る、洗う、ほぐす、梳かす、紡ぐ、です。

-「紡ぐ」の部分では、昔話に出て来るようなクルクル回す道具で糸を作って行くんですか?

笠木:そうです。ただ、単にクルクル回しているわけではなくて、紡ぎ車を足で踏みながら糸に回転を加えて行きます。50cmの間に7回踏むと強撚になるし、5回なら普通だし…と調整します。
また、糸の方向に対して繊維が斜め45°になるのが普通の糸なんですけど、角度をつけると強撚になって行きます。


-そうすると撚(よ)りながら数えるんですか?

笠木:そうです。ですから、1000mの糸を作ったりするんですけど、それを全部同じ撚りにするのは、すごく技術が必要です。
まず自分が作りたい糸をしっかりイメージして、それを作ります。


-イメージと言いますと、糸の色も変えられるんですね。

笠木:そうです。例えば、こちらは北海道のサフォーク、白い羊です。こちらがブラックウェリッシュマウンテンという黒い羊の濃茶とサフォークの白を混ぜて作った色です。白も濃茶も、それぞれの羊の品種の毛そのままの色です。

-色を混ぜるのは、糸を紡ぐ時に行うんですか?

笠木:いえ、梳かす時です。カーディングと言うんですけど、繊維を混ぜる工程で、梳かしながら混ぜます。


-こちらも羊の毛元々の色ですか?

笠木:これは桜の枝で染めた紡績糸です。ウールシルクです。
これはショールです。経(たて)は普通の手紡ぎ糸で、緯(よこ)は強撚の手紡ぎ糸です。緯糸の撚りによってで縮ませています。

-そうしてできた糸を、これまた昔話になりますが、「鶴の恩返し」のように、あるいは私が子どもの頃にあったようなおもちゃ「おりひめ」のように、経緯(たてよこ)に組んだ糸をトントンしながら、布にしていくわけですか?

笠木:そうです。1cmの間にこの糸が何本あるかを定規で測りながら、織って行きます。経(たて)が5本、緯(よこ)が5本を1:1って言うんですけど、それを比率をかえて緯の数を少なくするデザインにするなど、手織りだと自由にできます。


-そうすることによって、生地の模様が変わって行くわけですか。このようにシワが入るとか。

笠木:その通りです。粗くするともう少しスカスカにレースのようにできますし、ここは密にして幅を変えようというようにすることもできます。


-最初にどういう布を作ろうとイメージして、何本入れるかを設計して作り始められるわけですね。

笠木:経糸(たていと)は織り機の設定で変えて行きます。緯糸(よこいと)はお話ししたように一段ずつ決めます。例えば、経糸は、織り機にセットするとき、通し方を変えるとかします。
間違えて経糸(たていと)をセットしたりすると、間違えたところだけ解いて、通しなおします。


つづく

2021年4月14日水曜日

羊毛作家 笠木真衣さんのお話 第1回(不定期連載)

先日、北三瓶地区にあるKasagi Fiber Studioの羊毛作家 笠木真衣さんが、生地の品質やデザインを競う「ジャパン・テキスタイル・コンテスト2020」で経済産業大臣賞(最高賞)を受賞されました。

笠木さんは島根大学演習林とも関わりがある方で、何度か話す機会があった中で、羊毛や織物等について詳しくお聞きしたことがあります。

そのお話をこれから何回かに分けて、ご紹介します。

■Kasagi Fiber Studio
ホームページ https://nolifenowool.wordpress.com/
インスタグラム https://www.instagram.com/kasagifiberstudio

―――――

-機織りをされる方に初めて会ったのですが、笠木さんはどういったきっかけで織物を始められたんですか?

笠木真衣(以下、笠木):きっかけの一つは結婚で、もう一つはお話作りです。
後に挙げましたお話作りの方からお話しますと、天女の話を書くための取材として織物体験に行きましたところとても楽しくて、それが織物との出会い、織物を始めるきっかけとなりました。


-最初は織物ではなくて、お話に興味をお持ちだったんですね。

笠木:そうなんです。最初は短大にいて、その後、大学に編入したのですが、短大時代に幼児教育科で児童文学の授業がありまして、物語の構造に興味があったので、それを受講していました。それから自分でも物語を書いてみたくなり、大学4年生の時から書き始めたんです。それまでは創作はしたことがありませんでしたけど。


-もう一つのきっかけの結婚と言いますと?

笠木:結婚し、夫の仕事のため群馬県に住むことになったんですけど、群馬県には縁もゆかりもないので、何か身につけてから行きたいなと思い、習い事として織物を始めました。

織物を習いに行ったら、織り機に経糸(たていと)が準備してあり、それは古いろくろ式の和機(わばた)の織り機だったんですけど、経糸がかかっている様が美しくて、また実際に織ってみたら楽しくて、続けたいなと思ったんです。それがきっかけのもう一つ、「結婚」でした。


-先にもお話しましたように、私にとっては笠木さんが初めて会う織物をやっている人です。というように、織物を本格的にやっている人ってそうはいないと思うんですが、たまたま近くに織物を教える人がいたんですか?

笠木:織物の先生はインターネットで探しました。長野県の農家民宿に、半年くらいかけて、2泊3日で6回くらい行き、習いました。そこでは経糸(たていと)の準備まで、つまり織る直前の準備までを習いました。その後は独学でやっています。


-独学と言いますと、本やインターネットで調べていらっしゃるわけですか?

笠木:本やインターネットも使ってはいますけど、それらでは足りない情報もたくさんありました。そういう時に頼りになったのは、織り機のメーカーさんでした。織り機のメーカーさんに電話して習ったことが一番役立ちました。

織り機にもいろんな構造があります。私が習ったのはろくろ式の和機(わばた)、4枚綜絖*(そうこう)だったんですけれど、実際に手に入れたのは洋機(ようばた)でした。

*緯糸(よこいと)を通すスペースを作るために経糸(たていと)を広げるための器具

それは中古のフィンランドの水平天秤式の織り機なのですが、私が習って来たのとは構造が全く違いました。フィンランドのトイカというメーカーの織り機だったんですけど、トイカの織り機を日本で扱っている三葉トレーディングという輸入会社に電話しまして、構造や使い方を教えていただいたりしました。

本にもいろいろと書いてはあるんですけど、なかなかそれだけでは細かいところがわかりませんので、伺いながら習得して行きました。

もう10年くらいやっていますけど、まだ完全にできているという感覚はなく、とても奥が深くて、完璧に習得するというのは、独学でも教室に通っていても、とても難しいことだと思っています。


-専業で食べている作家もいるんですか?

笠木:織物で収入を得ている方はありますけど、織物だけで食べて行けるほど稼げる織物となりますと、個人で制作するのではなく、分業で制作することになります。

経糸(たていと)の準備専門の人、糸作り専門の人…と。私は糸作りから仕上げまで一人でやっていますが、織物制作だけで生活できる人というのは、なかなか少ないかもしれませんね。

岩手県の県産品でホームスパンという織物がありまして、ウールの手紡ぎ、手織りとなりますと、日本では生産量が多く、会社があったり、個人の工房があったりはします。

島根県は織染が盛んで、羊毛ではなくコットンが主流ですね。糸を染め上げて、その糸で織物を作るのが得意な地域なのだと思います。絣ですとか。

私がしているのは羊毛を洗いから、紡ぎ、織り、仕上げまでを一人で行うというものです。


-先生が少ないのは大変ですね。

笠木:そうですね、先生のことに限らず、何かと大変だと思います。習う人も少ない、出会う機会も少ないし、月謝も安くはないですね。羊毛も手に入りにくいですし、独立したからと言って、織り機などの道具を置くスペースが必要だったりします。趣味としてもハードルが高いですね。

毛糸について言えば、編み物人口の方が多いです。


-糸を紡ぐというと、多くの方にとってはお話の世界ですよね。「眠れる森の美女」ですとか。絵本で見て知っているというくらいです。

笠木:織りだけされている方はそこそこいらっしゃいますが、紡ぎをされる方は少なく、私のように羊毛を洗うところからされる方はもっと少ないです。


-既に洗いが済んだ羊毛で作品を作る人が多いということですか?

笠木:洗って、染めて、梳かしてあるものですと、すぐに紡ぎ始められます。そういったものをスライバーとかトップと言うんですけど、それを使って、自分の好きな毛糸を作ったりすることが多いです。スピニング(糸紡ぎ)をする人をスピナーというんですけど、それはされる方は多いです。色をブレンドする楽しさがあるので、何十色もの染めた羊毛から、ではどんな色の糸を紡ごうかと楽しんでおられます。

(つづく)


2021年2月8日月曜日

ホワイトバランス 続き

 前回記事に続き、カメラのホワイトバランスについてです。今回は人工的な光源に対応したホワイトバランスについてです。

まずは「電球」。ずいぶん青っぽいですね。

 白熱電球に照らされたものを撮ると黄色っぽく写っちゃう
  ↓
 だから、逆に少し青みがかったようにして、黄色を打ち消そう
  ↓
 実際には白熱電球下ではないので、単純に青くなっちゃった

ということなのでしょうね。


続いては、「蛍光灯」です。このカメラ(オリンパスE-500)の場合、「蛍光灯」には色温度4000K(白色蛍光灯)、4500K(昼白色蛍光灯)、6600K(昼光色蛍光灯)の3モードがあります。
色温度が高いほど青味が増し、色温度が低いほど赤味が増すそうです。星の色やガスの色と同じと思っておけば、覚えられそうです。


白色蛍光灯


昼白色蛍光灯


昼光色蛍光灯

上の3枚の写真は、下に行くほど、ホワイトバランス上は色温度が高い設定になります。
下に行くほど色温度が高いから青味を帯びて来るように思ってしまいますが、写真を撮ったのは蛍光灯下ではないので、それぞれ青味・赤味を打ち消す方向に色味を帯びるのでしょう。
例えば、「昼光色蛍光灯」は、昼光色蛍光灯のもとで撮ると青味がかって写ってしまうから、カメラはそれを打ち消すように、少し赤味がかったように写そうとするということなのでしょう。

と見て来ますと、野外で植物などを撮る時は、基本的には「オート」にしておいた方が、見た目の色が再現されそうです。凝った写真を撮りたい時はいろいろ工夫した方がいいのでしょうが。

ちなみに、より見た目の色にこだわるなら、「ワンタッチホワイトバランス」というモードもあり、現場で白い紙などを写して、それが白だとカメラに認識させてから、対象物を撮るという方法もあります。

ホワイトバランスについてのメモを兼ねた投稿は以上です。

2021年2月5日金曜日

ホワイトバランス

島根大学三瓶演習林では、主に演習林内の樹木の写真を撮っては、データベースに載せたり、SNSに投稿したり、ホームページでどんな写真があるかを紹介したりしています。

ですが、「中の人」は写真撮影のプロではなく、少しずつ独学で勉強しながら撮っています。

ですので、これから何回かの写真についての投稿は自分のためのメモのようなものであり、写真・カメラに詳しい方には役に立たないでしょう。

今回はホワイトバランスについて試してみました。カメラに設定されているプリセット・ホワイトバランスです。

使ったカメラはオリンパスE-500です。まあ、カメラ好きの方にとっては(あるいはそうでなくても)、もう骨董品ですよね、たぶん。
そのE-500を使い、三瓶演習林獅子谷団地の同じ場所で、いろんなホワイトバランスの設定で撮影してみました。
撮影した日の天気は、薄曇りというのでしょうか、モコモコとした雲が出てはいませんが、青空も見えていないというものでした。

まずこちらがホワイトバランス「オート」で撮影したものです。
目で見たとおりに写っているように思います。


こちらはホワイトバランス「晴天」で撮ったもの。
「オート」とほとんど変わらないようですが、黄色みがわずかに減り、緑色がわずかに濃くなったようにも思えます。


こちらはホワイトバランス「曇天」で撮ったもの。
「曇天」で撮ると、写真が少し青っぽく写ってしまうのを防ぐため、カメラが少し温かい色になるように補正して撮るようです。「オート」の写真より、わずかにですが、黄色みや赤みが増しているように思えます。


ここまで3枚の写真を並べてみましょう。「オート」「晴天」は自然な感じ、「曇天」はわずかに温かみが出たようです。


こちらはホワイトバランス「日陰」で撮ったもの。
「曇天」よりさらに温かくしようとしているようです。


ここまでのまとめとしては、「曇天」「日陰」といった影を意識したホワイトバランスのモードでは、そうではない時にそのモードを使うと、冷たい色調の写真になるのを防ぐために、温かい色調の方へ補正するということになるのでしょう。

(つづく)