2022年2月4日金曜日

羊毛作家 笠木真衣さんのお話 第6回(不定期連載)

 引き続き、大田市は北三瓶地区にいらっしゃる羊毛作家・笠木真衣さんへのインタビューを掲載します。今回はちょっと短めです。

 また、今回は写真がありません。写真については、笠木さんのInstagramをご覧になるとよいでしょう。


Kasagi Fiber Studio – Mai Kasagi

https://www.instagram.com/kasagifiberstudio


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(承前)


笠木:羊毛愛に溢れたいい生地ができましたので、羊毛に興味がある学生さんがいたら、実際に触ってみてもらいたいと思います。


-出雲の人でも佐田に羊がいることを知らない人もいるでしょうし。他県から来られて、どうやって探されたんですか。

笠木:あまりどこに移住しようというのはなかったんですけど、島根県が一番いいと思っていたので、島根県内で探していました。

 さっきは織物との出会いをお話ししましたけど、手に入りやすい糸に満足できない場合、高い糸を買ってやらないといけなかったんですね、初心者だった頃は。で、自分で紡ぎをやりたいと思って、前橋にいた頃に近くの工房に習いに行ったんです。その時はウールの紡ぎを習い、既にスライバー(梳かされた毛)になったもので紡いだんですけど、その時に、羊の毛の匂いがとてもいい匂いだったんです。紡がれる時、繊維が引っ張られ絡まっていくんですけど、その様に衝撃を受けて、明日もやりたいと思って、その「明日」が10年続き、羊の匂いに惹かれ、結婚する前から、羊を飼いたいと思っていました。で、夫にも話して、羊が飼えて織り機が置けるところに引っ越そうねということになって、夫の実家の松江に通ううちに、島根県の景観に惚れ込んで、大田市の景観が気に入って、移住しました。

 その前に県内で羊を飼っている人のところを訪問して、羊の生態と土地の相性を調べました。1軒目は川本町で飼われている羊を移住前に見学に行きました。すごく良かったんですね、羊の動きが。また、佐田に行って、結構な頭数がいる佐田町は大田市の隣ですし、ひつじの飼育は連携の必要なところもありますので、飼えそうだなという気持ちになりまして、大田市に決めました。

 飼ってみたら、大田市三瓶山の気候は羊にとって良い環境で、羊がいっぱい飼われているイギリスに風土が似ていたんです。湿度が高くて、曇りがちで雨が多く、涼しいと。島根の羊は1年中湿度が高いところにいるので、毛がしっとりしてます。逆に湿度が高過ぎで、バクテリアが繁殖して毛が黄ばみます。だからこの毛も真っ白ではなくて、少し黄色く見えるのは、島根県特有の湿度の高さでバクテリアが繁殖したためと思われます。だから悪い毛と評価されるかもしれないけど、傷んでいるわけではなく、それはそれで島根の色だと受け止めています。

 黄ばみは羊毛の価格を決めるときには減点になる性質です。染色するからほんとは白い方がいいんです。ブリーディングで毛色のコントロールもしているんです。より白い毛を生やす系統が残されて来たんです。毛をたくさん生やすために部分的に手術を行うこともあって、それはアニマルフェア的にどうなのかというのもあって、ノン・ミュージング・ウール、そういう手術をしていない羊から取った毛というのが高級アパレルでは銘打って使われるようになりました。動物の権利に配慮した環境で育てられた羊から取った毛が見出されたりしています。羊も毛のために負荷をかけられて育っていることもありますし。自然な状態で育っている羊からとった毛というのも見て欲しいです。

 白い毛の話をしましたが、逆にブラック・ウェリッシュという血統的に黒い毛しか出ない羊もいますよ。昔は染めるのにもお金がかかったので、昔のイギリス人はこの毛で作ったツイードが喪服だったりしたと聞いたことがあります。本当かわかりませんが。しかし、それくらいの真っ黒さです。若い羊は真っ黒、年取った羊はちょっと茶色がかっています。


-羊は犬まで行かなくても、反応があるんですか。懐くとか


笠木:動物としての羊ですね。感情をとても感じます。すごく臆病で、あまり触らせてくれないです。喜怒哀楽を感じることはありますし、犬や猫と濃密な関係を築かれている方がありますが、羊の場合も同じように感じることがあります。とてもうれしいです。近づいてきてくれたりするときもあります。のどをなでてあげています。ちょっとずつ仲良くなれています。うれしいです。


(つづく)

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