2015年4月6日月曜日

椿について、年配の方に聞きました(後編)

前回に続きまして、松江市在住の90歳代前半の方からお聞きした話をご紹介します。

今回は、前回の椿の実を煮て油を採る方法に続きまして、搾油所に持って行って油を絞ってもらうお話からです。


[搾油所に持って行って油を絞ってもらう]
搾油所に実を持って行って油を絞ってもらう時は、浜乃木町にあった搾油所で絞ってもらったそうです。今もその搾油所があるかどうかわからないとのことでした。

今でも現役の搾油所が出雲に一箇所、雲南に一箇所あると聞きますが、確認していません。

椿油は天ぷら油に最高で、山茶花油はそれよりさらに上等だそうです。
また、髪油としても最高で、特に女性の髪によいとのことでした。今でも、例えば京都にこんなお店もありますね。

■かづら清老舗 http://www.kazurasei.co.jp/

その他に、どんな使われ方をしたのでしょうか。

椿の材は緻密ですが、桜や樫のように鍬の柄や敷居等に使われるのは見たことがないそうです。和傘の上部と中間の骨受けには使われたそうです。


緻密で思い出しましたが、私の知人がヤブツバキの材も使って木口版画というものをやっています。

■松岡淳 版画家・イラストレーター https://atsushimatsuokawe.jimdofree.com


こういった年配の方のお話は書き留めておかないといずれ忘れ去られてしまうかもしれませんので、ここに記してご紹介しました。

2015年4月3日金曜日

椿について、年配の方に聞きました(前編)

先日、松江市役所近くの末次公園に行きましたところ、椿が咲いていました。



ヤブツバキは島根大学の演習林でもよく見られます。葉はこんな感じ。三瓶演習林で撮った写真です。


椿は松江市の「市の花」になっています。


松江城には椿が植えられ、かつては刀の錆止めに使われていたとも聞きます。
(ダッチオーブンの錆止めにオリーブオイルを塗るのを連想しました。)

出雲とも関わりがあるようで、東京は銀座の花椿通りには、出雲市から贈られた椿が植えられているそうです。

■銀座花椿通り http://ginza-hanatsubaki.jp/


そんな椿について、松江市在住の90歳代前半の方から、かつての椿利用についてのお話を聞きましたので、ご紹介します。
(ここまで「ヤブツバキ」と書いたり「椿」と書いたりして来ましたが、以下では「椿」にします。種名としてはヤブツバキですが。)

椿油と言いますと、伊豆大島か五島列島かという印象がありますが、かつては松江でも使われていたそうです。
椿の実を初秋から実が落ち終わるまでの間に採り、自宅で煮て油を採るか、搾油所に持って行って油を絞ってもらうかしたそうです。

椿の実の写真はこちらをどうぞ。

■ヤブツバキの果実と種子 植物生態研究室(波田研) 岡山理科大学 http://had0.big.ous.ac.jp/plantsdic/angiospermae/dicotyledoneae/choripetalae/theaceae/yabutsubaki/yabutsubaki4.htm


[煮て油を採る]
煮て油を採る場合は、およそ以下のようにしたそうです。

焙烙(ほうろく)鍋で椿の実に熱を加えて、実を砕く。
   ↓
大鍋に湯を沸騰させて、砕いた実を入れ、タケを薪として燃やし、熱する。
*孟宗竹(モウソウチク)を乾燥させた薪でないと火力が弱く、駄目になる。
*火の加減があり、出入りの老女が秋毎に来て煮てくれた。
   ↓
上に浮いた油を別の容器に取り、水と油に分離させる。

一斗(約18L)入りの竹籠2杯くらいの実で、一升瓶(約1.8L)2本くらいの油が採れたように記憶しているとのことでした。


今回はここまで。次回は、[搾油所に持って行って油を絞ってもらう]その他についてご紹介します。