2016年1月6日水曜日

門松にも使われるナンテンについて

明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。

さて、ナンテンについて、当演習林の元・技術補佐員である和田慎氏から寄稿いただきましたので、ご紹介します。

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 謹賀新年
 本年も宜しくお願いいたします。

  お正月、松江城へ行ってみました。本丸御門に置かれている門松がとても豪華でした。


 松江歴史館の門松もきれいに飾られていました。

 特にセンリョウ、マンリョウ、ナンテンの赤が印象的でした。そこでナンテンについてちょっと調べてみました。

 ナンテン(メギ科ナンテン属の常緑低木)は日本、中国中央部に野生種もあるのが知られていますが、日本ではほとんどが庭木として栽培されています。


 平安時代の歌人藤原定家の「明月記」(1180年-1235年)にも栽培の記録があるそうです。(「週刊朝日百科 植物の世界」94 ⑧ P.314)

 姿が美しいことに加え、「難を転じる」めでたい木とされていたようです。特にナンテンを家の周りに植えると火災から逃れられるとして、庭木として広まったようです。戦国時代の武将は縁起を担ぎ鎧櫃(よろいびつ=鎧を運ぶときの箱)の中にナンテンの葉を添えていたと言われています。

 ナンテンの実にはアルカロイドであるドメスティンが含まれ、民間で喘息、百日咳などの鎮咳薬として使われていたそうです。(平凡社「世界大百科」ナンテン項 )
 今でもナンテンの名を冠したのど飴が売られていますね。

 沖村義人著 「樹木の島根方言」(1988) によりますと、旧八束郡や大田市では、ナンテンで小さな瓢箪型のものを作り、麻疹が軽くなるようにと子どもの体につけさせていたようです。
 また、一畑薬師では、中風予防の為にナンテンの箸や杯を売っていたとのこと。これも樹皮にアルカロイドが含まれていたことに拠るそうです。(同書 P.132)

 山陰地方の古民家は便所が別棟になっていますが、手水鉢のそばにナンテンが植えてあり、水が無いときはナンテンの葉で手を揉む習慣があったそうです。 (高齢者からの伝聞)
 おせち料理や赤飯の入った重箱、鯛の塩焼きなど魚料理にナンテンの葉を添えるのも、アルカロイドの抗菌作用に期待するからなのでしょう。