「棘」か「突起」か「剛毛」か…
それだけで検索結果は大きく変わり、入力ワードを選ぶことの重要性を実感しました。今回紹介するのは、体長10mmにも満たない小さな青いアブです。
6月のリター。
ウワミズザクラの種子や、アカマツ、サルナシ、コナラ、エゴノキの花々に埋もれて、キラリと光る青いもの。
つまみ上げてみると、光っていたのは昆虫の胸部で、腹部は光沢のあるダークブラウンといった感じの色合いです。
見る角度によって虹色の光沢がある透明な翅が残されています。体長は7mmほど。生きていた頃はきっときれいな虫だったのでしょう。
「青蜂(セイボウ)かもしれないな」
最初のうち、私はそう思いました。青く輝く寄生蜂を前から見てみたいと思っていたので、ワクワクしながら青蜂の種類を調べ始めました。けれど、これに一致する色合いの青蜂は見つかりません。
どうやら憧れの青蜂でないと悟り、少しがっかりしながらルーペで頭部を覗きました。見えたのは頭の面積の大半を占めるマイクのような暗赤色の眼。
「これは、ハチじゃない。双翅目の顔だ・・・」
種名を知りたければ、ハエやアブの仲間から探さねばなりません。
でも、手がかりは・・・?
退勤の打刻時刻が迫る中、ルーペを覗く私の目に映ったのは、この昆虫の胸部の後縁に見える6本の毛のようなもの。改めて顕微鏡で確かめると、かなり太くしっかりしており、規則正しく並んでいるそれらは特徴といってよさそうでした。
帰宅後、あの特徴を手がかりに検索してみることにしました。ハエなどはよく剛毛の生え方で分類されているイメージがあったので、「双翅目 胸部後縁 剛毛」というようなワードを入れて何回か画像検索してみたのですが、いっこうにそれらしきはヒットしません。
再度考えてみました。
毛、というものはそれが生えている箇所と、毛そのものでは当然質感が違います。けれど、顕微鏡で観察したとき、胸部後縁に並んでいたあれらは、胸部の一部がそのまま突き出したようで質感は同じでした。
つまり、「剛毛」という表現がまずかったのかもしれません。
そこで次は「突起」にしてみました。しかし、これもうまくいきません。
最後に「棘」と入れてみました。
すると、検索結果の画像の中に胸部後縁に2本の棘が生えた黒いアブの写真が出てきました。写真にはミズアブ科の昆虫と紹介されています。そして棘が生えている部分は小楯板という名前であることも分かりました。
「きっとミズアブ科の昆虫なんだ」
私は「ミズアブ科 小楯板 棘6本」と入れて再検索しました。
大成功!ようやくヒットしました。
そして分かったのは、リター内のこの虫がミズアブ科Beris属の昆虫であること。
近縁種に小楯板の棘が4本のものがいるそうですが、4本だとActina属、6本だとBeris属になるそうです。Actina属には、キアシホソルリミズアブやエゾホソルリミズアブが知られています。
しかし、Beris属に分類される種のほとんどには和名がありませんでした。
身近にも生息しているようですが、知る人ぞ知る種ということなのでしょうか。
ミズアブ科Beris属は訪花性昆虫ということで、6月の花々を巡っている途中だったのかもしれませんね。また、Beris属を調べていく中で、2019年より前のリターから時々見つかっていた、象の鼻を短くしたような吸いつき型の口器を持つ扁平な幼虫の正体が、どうやらミズアブ科の幼虫であることも分かりました。
*ミズアブ科Beris属が見つかったリター 20190606 30-50/70-30/70-70、20190620 30-50
まだまだ見つかるかもしれません♪
スタッフS
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