2024年10月3日木曜日

知られざるリターフォールの博物誌  始まりの話

 三瓶演習林では、広葉樹二次林内の1ha(100m×100m)のサイトに、縦横20m間隔で25個のリタートラップが設置されています。そこから定期的に回収されるリター(※)のデータをもとに、何年にも渡って森林動態の調査が行われています。

私の演習林での仕事のひとつは、持ち帰られ乾かされたリターを、決められた項目に沿って分類、量を計測することです。

「花」、「托葉」、「種子」、「広葉」、「針葉」、「木質」、そして「その他」。

リターは「花」の項目ひとつとっても、樹種ごとの形の違いや落下するまでの成長の差、原形の残存具合によって状態は様々…。人の目と手で分けることが必要な、細かく地道な作業です。

さて、これから私がお話ししようと思うのは、リターの中の名もなき小さなものたちの記録です。特に、「その他」に分類された誰にも見向きもされないものたち。

リターの中の植物や生き物の残骸は、色あせていたり、体の部位が失われていたり、粉々だったりするので、種の特定など細かいレベルの分類には向かないことが多いのは事実です。

けれど、中には状態がよいものもあって、そこには確かに三瓶の森の生き物を知る手がかりがあります。手がかりがあるのなら、可能な限り生かしたい!小さな発見でも積み重ねればおもしろい世界が見られるかもしれませんからね。

そのような訳で、森林の物質循環などの専門的な研究は、先生方に任せるとして、私は分類作業中に出会う個々の生き物たちにスポットライトを当て、知られざる彼らの姿を紹介していきたいと思います。


三瓶の森の神様へ

遅筆な私がどうかこの博物誌を少しでも長く続けられますように。

リターを通して、たくさんの生き物を知り、それを読んでくださる方へ伝えられますように。



(※)林冠から地表に降下する葉や枝などの枯死物を、リターまたはリターフォールと呼びます。

*図鑑や専門サイトなどで可能な限り調べてから、リターの中の植物や昆虫などを特定するようにしていますが、専門家ではないため、中には間違いがあるかもしれません。どうぞご了承ください。

*個々のリタートラップのサンプルは採集された年月日と地点の番号で表されています。2024年9月19日に採集した地点番号30-50のサンプルであれば、20240919 30-50と表記。紹介するのは、主に私が現在、分類している2019年のサンプルです。

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