2021年11月8日月曜日

羊毛作家 笠木真衣さんのお話 第5回(不定期連載)

久しぶりにブログを更新します。羊毛作家 笠木真衣さんのインタビューの続きです。

笠木さんは、ちょうど先日、「中国地域女性ビジネスプランコンテストSOERU」で大賞(中国経済産業局長賞)を受賞されました。おめでとうございました。

第5回SOERU各賞が決定いたしました!


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-前回のお話では、手洗いの羊毛には草の種などがついていることもありますが、それは毛がよい状態で生地になっているということでもあり、それもまた味でもあるといったお話でした。そうして手洗いされた羊毛ですが、この羊毛はこの後、どうなるんですか。何に使われるのでしょうか。

笠木:あまり具体的な商品開発を考えずに出しちゃったんですけど、まずブランケットにしてみようかなと思っています。あとはベッドカバーとか。とてもあったかいんですよ、純毛で。羊が-25℃の北海道の大地でも寒くないように生えている毛ですから、とてもあったかいんですよ。夫のジャケットにするために、テーラーに出してみようと思っています。あと、カーテンとかですね。


-カーテンもよさそうですね。こういう模様が。

笠木:調湿機能もありますしね。こういうのが入っている生地ってあるじゃないですか。


-そうですね。点々が入っていて自然っぽいな、という感じがする生地がありますね。

笠木:直接肌にこういうのが当たるとチクチクするかもしれませんけど、そういうものでなければいいですよね。

 使い道は何なのかというよりは、私が大量に羊毛を使ってみたかったという欲望から作ったものだったんです。今まで10年くらい羊毛でいろんなものを作ってみたんですけど、すごく楽しかったです、今回40kgの羊毛を出荷した時は。

原料積み

 普通1年かかって1.5kgの羊毛を服地にするくらいの仕事しかできないのに、機械ってすごいなと。これ3ヶ月で上がって来たんです。ミュール紡績機っていうので紡いでもらったんですけど、ほとんど私が手紡ぎするのと同じ工程を機械がやってくれるんです。これ全部で1万mあるんですけど、全部均一ですごいなって思って。

調合中

 逆に手仕事で均一にするってすごい大変なんですよ。機械の凄さ、ありがたみを感じる体験でもありました。たくさんの羊毛がかっこいい生地になっていいなと思ったり、工場の方にいろいろ教えてもらったり、楽しかったですね。ほんと勉強さしてもらいました。

ミュール工程

-小ロットでもやってくれる工場がよく見つかりましたね。普段から他の作家さんの仕事を受けたりしている工場なんですか。

笠木:いえ、前例はほとんどないようです。私も、いいと言ってくださって、それからその工場で作られている糸を実際に買って自分で手織りしてみて、この方の作る糸はすごいウール愛を感じられる、と言うとおこがましいですけど、すごくウールの特性を捉えたデザインで、素晴らしい紡績糸(工場で紡績された糸)だったんですよ。弾力があり、切れず、デザインも色もかっこいい。すごくウールの力が生きてるって感じがしながら織ってましたね。すごく惚れ込んで、すぐ社長さんに電話して、なんでこんなに素晴らしい糸が作れるんですかって聞いたら、「フフッ、そうかい」って笑ってましたけどね。MWっていうイギリス羊毛100%の糸だったんですけど、本当に素晴らしい糸を、手紡ぎでなくて作れる方がいらっしゃるんだと思いましたね。その時まで工業製品を舐めてたと思うくらい、素晴らしい糸でしたね。この方にお預けすれば、いい糸にしてくださるという思いがあって、それから絶対出荷すると思って2年かかって40kgを集めて、それから送りました。
ミュール工程


-それが笠木さんがご自身のサイトに載せていらした会社ですか。

笠木:そうです。
今回の生地については、三河紡毛という紡績会社の方と山栄毛織という会社の社長さんとのお二人で作っていただいた生地です。織った後もいろいろな工程がありまして、縮絨って言って、縮める、フェルト化させるんですけど、起毛させたり、プレスしたり、いろんな工程を経ることで、かなり雰囲気が変わるんですよね。これも私がこういう生地にしたいとお伝えして作っていただいて、とてもツイードらしい自然な風合いにしていただいたと思います。すごく丁寧にしてくださったんですよね。素材も珍しい素材なので、すごく丁寧に進めてくださいましたし、細かく私の意向を聞いてくださって、割りに合わない仕事だったと思うんですけど、紡績会社の方も毛織り会社の方も、とても親切にしてくださいました。羊毛愛がいっぱいのものができました。

(つづく)

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