「棘」か「突起」か「剛毛」か…
それだけで検索結果は大きく変わり、入力ワードを選ぶことの重要性を実感しました。今回紹介するのは、体長10mmにも満たない小さな青いアブです。
6月のリター。
ウワミズザクラの種子や、アカマツ、サルナシ、コナラ、エゴノキの花々に埋もれて、キラリと光る青いもの。
つまみ上げてみると、光っていたのは昆虫の胸部で、腹部は光沢のあるダークブラウンといった感じの色合いです。
「棘」か「突起」か「剛毛」か…
それだけで検索結果は大きく変わり、入力ワードを選ぶことの重要性を実感しました。今回紹介するのは、体長10mmにも満たない小さな青いアブです。
6月のリター。
ウワミズザクラの種子や、アカマツ、サルナシ、コナラ、エゴノキの花々に埋もれて、キラリと光る青いもの。
つまみ上げてみると、光っていたのは昆虫の胸部で、腹部は光沢のあるダークブラウンといった感じの色合いです。
三瓶演習林では、広葉樹二次林内の1ha(100m×100m)のサイトに、縦横20m間隔で25個のリタートラップが設置されています。そこから定期的に回収されるリター(※)のデータをもとに、何年にも渡って森林動態の調査が行われています。
私の演習林での仕事のひとつは、持ち帰られ乾かされたリターを、決められた項目に沿って分類、量を計測することです。
「花」、「托葉」、「種子」、「広葉」、「針葉」、「木質」、そして「その他」。
リターは「花」の項目ひとつとっても、樹種ごとの形の違いや落下するまでの成長の差、原形の残存具合によって状態は様々…。人の目と手で分けることが必要な、細かく地道な作業です。
さて、これから私がお話ししようと思うのは、リターの中の名もなき小さなものたちの記録です。特に、「その他」に分類された誰にも見向きもされないものたち。
リターの中の植物や生き物の残骸は、色あせていたり、体の部位が失われていたり、粉々だったりするので、種の特定など細かいレベルの分類には向かないことが多いのは事実です。
けれど、中には状態がよいものもあって、そこには確かに三瓶の森の生き物を知る手がかりがあります。手がかりがあるのなら、可能な限り生かしたい!小さな発見でも積み重ねればおもしろい世界が見られるかもしれませんからね。
そのような訳で、森林の物質循環などの専門的な研究は、先生方に任せるとして、私は分類作業中に出会う個々の生き物たちにスポットライトを当て、知られざる彼らの姿を紹介していきたいと思います。
三瓶の森の神様へ
遅筆な私がどうかこの博物誌を少しでも長く続けられますように。
リターを通して、たくさんの生き物を知り、それを読んでくださる方へ伝えられますように。
(※)林冠から地表に降下する葉や枝などの枯死物を、リターまたはリターフォールと呼びます。
*図鑑や専門サイトなどで可能な限り調べてから、リターの中の植物や昆虫などを特定するようにしていますが、専門家ではないため、中には間違いがあるかもしれません。どうぞご了承ください。
*個々のリタートラップのサンプルは採集された年月日と地点の番号で表されています。2024年9月19日に採集した地点番号30-50のサンプルであれば、20240919 30-50と表記。紹介するのは、主に私が現在、分類している2019年のサンプルです。
目をひくのは、センニンソウ、オトコエシ、ヒヨドリバナ、キンミズヒキ、アキチョウジなど。もう10月も終わりになってしまいますが、9月から10月にかけて松江試験地周辺で見られたこれらの野花を紹介します。
先ずはセンニンソウ。花期は9月頃です。これは幾本もの細長い蕊を持つ真っ白な花が美しい蔓性植物で、クレマチス(てっせん)の原種として知られています。満開の花がふんわりと辺りを覆っている様子は雪が積もったよう。合間に咲く真っ青なツユクサとのコントラストはとても爽やかです。
しかし、このセンニンソウ、茎や葉の汁に触れると炎症を起こすほどの毒性を持っているのだとか…。優美で清楚な見た目に反して恐ろしい。
名の由来は、花の後、種子から伸びた白い綿毛を仙人の白い髭になぞらえたことから来ているそうです。
次は、オトコエシ(男郎花)と、ヒヨドリバナ。これらの花は昆虫たちに人気です。しばらく見ていると何種類もの昆虫の訪れを観察することができます。アカスジツチバチ、ヒョウモンチョウの仲間、アカタテハ、南方へ渡り途中のアサギマダラなど…。どの昆虫たちも夢中になって蜜や花粉を食べて満足そうなご様子。
それは、4月19日のこと。
実験室のラジオからは、「今日は『飼育(419)の日』」ということで、リスナーが飼育しているいろいろな生物の話題を紹介する番組が流れていました。
それを聴きながら、私は、昨年初めて飼育し、今年も誕生を待っている昆虫のことを思い出しました。それは、昨夏のナナフシばらばら殺虫事件で非業の死を遂げたヤスマツトビナナフシの忘れ形見である卵たちです。
年が明けて早くも1月下旬。2023年の毎日も忙しく過ぎていきます。
表題の「主役」とは、今年の干支である卯(ウサギ)のこと。ニホンノウサギは演習林にも生息している動物です。警戒心が強いらしく、普段はなかなか姿を見られませんが、雪が降った後に残される特徴的な足跡からは、彼らが活発に暮らしていることが窺えます。
“かわいくて弱い動物”のイメージが強いウサギちゃんですが、野生のウサギを一度目にすると、そういったイメージとはかけ離れていることに気づきます。
私事ですが、昔、北海道でエゾユキウサギに出会ったとき、その脚がおそろしく長いのを見て、驚いたことがあります。そして体に不釣り合いなほど大きな後ろ足の強そうなこと!
なるほど、これならものすごく早くパワフルに走れるだろうなと納得しました。
後ろ足の指をいっぱいに広げて、丁寧に舐めてお手入れする様子からは、この足が、キツネやテン、そして猛禽の攻撃から生き抜くために、とても重要な武器であることが伝わってきます。
彼らはまさに“戦うウサギ”。攻撃力の強さではなく、用心深さと敏捷さを武器に持つ戦士だと思います。自然界での強さは、捕食者として強いということだけではないと実感させられたエゾユキウサギとの出会いでした。
これは、演習林に生息するニホンノウサギにも共通する強さではないでしょうか。演習林で働いていると彼らの生態を知るきっかけに巡りあうことがあるかもしれません。それがとても楽しみです。
下の写真は、スタッフOさんに見せていただいたノウサギです。昨年末、三瓶演習林に設置した自動撮影カメラに写っていたそうです。
雪の中を走っているようですが、毛の色は白くなっているのでしょうか。それとも夏とあまり変わっていないのでしょうか。三瓶ウサギの冬の姿、気になります。
スタッフO:その後に撮れた写真を見ますと、白黒で写っていますのではっきりとはわかりにくいのですが、どうも毛は白くなっていないようです。例えば、このように。
(かわいいウサギなんですが、植えた木をかじる困った動物でもあります)
あるいは、このように。図鑑など見てみましたら、白色になる個体と茶色のままの個体があり、積雪の多い地域では白色個体の割合が高まるといったことも書かれていました。
スタッフS