2025年2月21日金曜日

仁摩の珪化木を見に行ってみました その2

 前回投稿では、仁摩の珪化木へ坂灘海岸から行こうとして断念したことを書きました。

そこで、今度はチーナカ豆さんのブログにあった別ルートを探してみました。

このGoogleマップでいいますと、坂灘古墳とある辺りから潮川を遡る方向へ進んで2本目の橋を右折します。


その道をずっと行きますと、上の地図で「配水場」とあるところの道沿いに、珪化木についての案内板が立っていました。


仁摩の珪化木についての説明が書かれています。


この看板と配水場入り口の間にある歩道を行くといいようです。


この道を下って行くと…


海が見えて来ました。以前は急坂で大変だったのでしょうが、今は階段が整備されていました。これはありがたいです。


砂浜に出ました。この奥の方に珪化木があるのでしょう。


ここもやはり干潮の時に来る必要がありそうです。


崖はグリーンタフ(緑色凝灰岩)でできていました。


この磯の平らな部分の一番奥まで行くと、大きな珪化木がありました。

矢印と字で示したところ(小さくてわかりにくいかもしれませんが)は、前回投稿で断念した地点です。


大きくて、迫力があります。


戻る途中、こんなグリーンタフのかまくらのようなところがありました。

(他にもこのように掘れているところがありました。グリーンタフは柔らかい岩質なんでしょうか。それにしても、どのようにしてこうなったのか。)


そして、この「かまくら」の下にも珪化木(ですよね?)がありました。これはさっきのと違って、数十cmですけど。


この辺りは海中の石もグリーンタフですね。


さらに戻って行きます。奥に小さく先程の階段が見えています。


この平らな磯の中央付近にも大きな珪化木がありました。行く時には見落としていました…


さらに戻って砂浜の近くに、こんなのもありました。岩に埋もれているので、これも珪化木なんでしょうね。


おまけとして、砂浜に戻ると、こんな岩が。中の丸い石が波で動かされ、その周りを彫ったんでしょうかね。


というわけで、ようやく前から見たかった珪化木を見ることができました。演習林ブログですが、そこはまあ木の話には違いないということで、ご容赦を。

見に行かれる方は、くれぐれも天気と潮位に気をつけてお出かけくださいね。海が荒れている時、潮位が上がっている時は危ないですから。また、崖にも寄らない方がいいでしょう。

2025年2月18日火曜日

仁摩の珪化木を見に行ってみました その1

先日、大田市は仁摩の珪化木を見に行ってみました。

[リンク]石見の火山が伝える悠久の歴史 仁万の硅化木


同じく大田市は波根にある珪化木は見に行ったことがあります。が、仁摩の珪化木については、「ここ、どう行ったらいいんだ…」という感じで、なかなか行けずにいました。

[リンク]「仁万の珪化木」に行ってみた。 チーナカ豆

話がずれますが、琴ヶ浜にある「チーナカ豆」はいい店です。


さて、そのどう行ったらいいかわからない仁摩の珪化木、まずは坂灘海岸から行ってみました。

この海岸には何度か来たことがあります。

河口付近は石の浜で、木の化石が落ちていることがあります。また、ホシフグがたくさん打ち上げられていたことがありましたし、アオイガイを拾ったこともあります。

何台か車を停められるスペースがありますので、そこに車を停め、浜に降りてみました。この浜を写真奥に向かって歩いて行きます。


途中、こういう岩石でできた岩場があります。これは火山性の岩なのでしょうか。白い筋が入っている岩もあります。(背景に見えているのが坂灘海岸です)


その筋をよく見てみると、石英のようでした。


こんな穴もありました。人工のものではなさそうでしたが、どうやってできるんでしょうね、こういう穴は。


さらに進んで行くと、砂浜と平らな岩場に出ます。

島根ジオサイト100選(石見地方)」の説明からしますと、ここが「仁摩の火道」と呼ばれるところなのでしょう。2000万年前頃の火山の火道(マグマが地表に出る通り道)だったそうです。


火道にあたる波食棚をつくる黒っぽい岩のほかに、こういう薄緑色の岩も多く見られます。


これは緑色凝灰岩(グリーンタフ)というものだそうです。火山灰中の鉱物が熱水によって緑泥石に変質することにより緑色になっているとのこと。

次の写真で、左側には海に向かって突き出ている緑色凝灰岩があり、その右側には黒っぽい岩の波食棚があります。ここが火道の境目のようです。


で、肝心の珪化木はどうなったかと言いますと…次回の投稿をお待ちください。

ここからさらに奥に行かないといけないのですが、傾斜のきつい岩場を海に落ちないように歩いて行かないといけなくて危険でしたので、ここからのアクセスは断念し、別ルートを探すことにしました。

ちなみに、干潮の時を狙って来ないと、ここも来れなさそうですよ。

(つづく)

2025年1月17日金曜日

新年のご挨拶 2025年

 

明けましておめでとうございます。

今年の干支は「巳」。

ヘビは古今東西にわたり、神様の化身や使いとして、一方ではヤマタノオロチやメドゥーサのような怪物として神話や伝説に登場し、人類の文化に影響を与えてきました。

自然界においても、ヘビに擬態して身を守る生きものは、たくさんいるようです。

アケビコノハの幼虫やジャノメチョウの仲間は、体によく目立つ蛇の目模様を持っているし、ビロードスズメガの幼虫にいたっては体全体がヘビそっくりです。

ヘビは、人間界、自然界の両方で影響力のある生きものなのですね。

写真は、数年前の7月下旬に三瓶演習林で撮った二匹のマムシです。
林道脇すぐの草むらで見通しもよかったので安全な場所からしばらく観察していました。

ちょうどマムシの繁殖期だったのでしょうか。
手前で淡く光るクモの巣は半透明の帳のよう。その奥で二匹のヘビが滑らかに絡まりあう様子は、どことなく艶めかしさを感じさせました。


今年もよき一年となりますように。

演習林の様子をお伝えするお便りが、忙しい皆さまのささやかな発見や息抜きとなることを願っています。

スタッフS




2024年11月11日月曜日

知られざるリターフォールの博物誌(3) 絶滅危惧種のアリ

 “アリ”という昆虫は多くの人とって、身近な昆虫だと思います。

私にとっても、長らくアリはそういう存在でした。

子どもの頃、塀に沿って続いていく小さな赤いアリの行列を辿ったり、庭石をひっくりかえしては、慌てて卵や蛹を運び出す彼らの様子を覗き込むのが好きでした。
春の砂地でアリの巣を見つけたときは、さやから剥いたカラスノエンドウの実をたくさん穴に転がしこんでいたずらもしました。
また、結婚飛行を終えたばかりのお腹の大きな女王アリを捕まえたときは、しばらく飼って女王が卵や蛹の世話をしたり、子どもが増えていくのを毎日観察したことを覚えています。

これらはそれぞれ別の種だったと思いますが、あまりに身近だったためか、アリの種類を調べたことは、これまでほとんどありませんでした。同じ膜翅目(ハチ目)であるハチたちの生態や多様性に魅せられて、少しずつ科名や属名、種名を覚えるようになった一方で、アリの種類には無頓着だったのです。

けれども、リターの中の生きものを知ろうと決めたとき、アリをただのアリで片付ける態度を悔い改めなければいけないと思いました。それに、アリは私の好きなハチと同じ膜翅目。アリを知ることは、ハチを深めることに繋がるし、実際のところアリの生態自体もおもしろいに違いありません。

「宣誓!私は、アリをただのアリで片付けず、丁寧な観察を心がけることを誓います!」

心を入れ替え、確実とはいえないまでも特徴を掴もうとするようになってから、まだほんの3、4種類ですがリターの中のアリを見分けられるようになりました。今回はその中から、姿も生態も存在も珍しい、とっておきの変わり者アリをご紹介します。

そのアリを見たとき、ちょっと想像していなかった異様な姿に目が釘付けになりました。
背中によく目立つ大きなトゲを何本も生やしています。

胸部前方からやや下向きに生えるトゲが一対、胸部の中央部分から生えるトゲが一対、胸部の後方部分から後ろ向きに生えるトゲが一対、そして、胸部と腹部の間の腹柄節と呼ばれる部分からひときわ長く大きく、見事なカーブを描いて生えるトゲが一対。

これらのトゲを生やしている胸部と腹柄節は赤く、頭部と腹部は黒い漆塗りのような配色。
その姿はどことなく鎧に身を包んだ侍を思わせます。

“トゲアリ”、まさにそのものズバリ――。それが調べて分かったこのアリの名前でした。


(トゲアリの胸部の写真 上:横から 下:正面から)

さて、このトゲアリさん。姿かたちだけでなく、どうやら生態もユニークなようなのです。
彼らは、“一時的社会寄生”をする生きものなのだそうです。

昆虫学をきちんと学んでいない私には分からないことも多いのですが、膜翅目(ハチ目)の昆虫を探求しようとするとき、“寄生”や“社会性”という生活様式を理解することは、おそらくとても大切です。彼らの進化は、“寄生”や“社会性”の発達を理解することなくしては語れません。

では、トゲアリの “一時的社会寄生”とは、いったいどんなふうに行われるのでしょうか?

それは、トゲアリ女王が他種のアリの巣に侵入して、本来の女王を殺してしまうところから始まります。侵入当初から、その巣内の多数の他種アリと戦ってきたトゲアリ女王は、既に“その巣の匂い”なるものを手に入れており、“匂い”の仮面により他種の女王に成りすましてしまいます。

こうして乗っ取りに成功し、他種の働きアリたちに世話をしてもらいながら自分の子どもたちをどんどん増やしていくトゲアリ女王。女王がいない他種のアリは増えることができないので、最終的にその巣はトゲアリだけが生活する巣になります。

最初のうちは(一時的に)他種のアリの生活力に頼り(社会寄生)、最後は自立して生活を営むというのがトゲアリの戦略というわけです。なんてちゃっかり者なのでしょう!

しかし、トゲアリの女王が単独で他種のアリの巣に乗り込むのは非常にリスキーであるため、最初で失敗することが多いらしいです。うまくいけば熟練の働き手を一度に大勢手に入れることができますが、それは命がけでやらねばならない大仕事なのですね。

「トゲアリ女王の国盗り物語 ~暗殺と偽りの仮面に秘められた一族への愛~」

三流小説のタイトルみたいですが、“一時的社会寄生”をテーマに紙芝居が作れそうです。

今後、気になるのは三瓶のトゲアリの“一時的社会寄生”の対象となっている宿主アリが何かということです。生きているものの観察ではないので断定することはできませんが、対象となりそうなアリの候補に注意しながら、リターの分類をしていきたいと思っています。

最後に、トゲアリは、環境省のレッドリスト2020で絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
環境省のホームページによると、絶滅危惧Ⅱ類とは“絶滅の危険が増大している種”だということ。

トゲアリが生息するためには、立派な広葉樹がある豊かな雑木林が必要です。
さらに“一時的社会寄生”という性質上、その生存を支える他種のアリの存在も安定したものでなければならないでしょう。
そう考えると、トゲアリの存在は、三瓶の森の豊かさの証と言えるのではないでしょうか。
アリたちが我々にとって身近なものであり続けられるよう願わずにはいられません。


※トゲアリが見つかったリタープロット 

2019.6.6 30-50、2019.6.20 30-50、2019.8.1 50-70


スタッフS

2024年10月18日金曜日

知られざるリターフォールの博物誌(2)  レースの翅(はね)を持つ虫

今回の主人公は、英語で“lace bug”(レースバグ)、と呼ばれる昆虫です。
和名では、“グンバイムシ”。
その名の由来は、戦国武将や相撲の行司が持っている“軍配”にかたちが似ていることから。
半翅目(カメムシ目)に属する彼らは、花木や果樹を吸汁する害虫です。
しかし、体長3、4㎜ととても小さいため、この虫を知らない人が圧倒的に多いことでしょう。
リターの中には彼らの痕跡が見られます。少しではありますが彼らの姿をご紹介したいと思います。

写真は6月のリターに入っていたグンバイムシの左右の前翅です。
顕微鏡を用いて、初めてこの翅を見たとき、なんてきれいなのだろうと思わず見とれてしまいました。多角形に区切られた小さな翅室(※)がモザイクタイルのように並び、薄い透明な膜が光を通してキラキラと輝いています。グンバイムシを調べる中で、“まるでステンドグラスのようだ”という記述をたくさん見かけました。私もまさにその通りだと思います。

どうでしょう?この翅をモチーフにピアスやイヤリングをデザインしてみるのは。
なかなか素敵なものができると思いませんか?
翅室ひとつひとつに透き通った色を入れます。何色もつかって彩り豊かにしてもよいし、同系色のグラデーションにしてもよいかもしれません。こんな想像(創造)をするときっと楽しいですよね。


翅の模様や演習林内で食樹になりそうな樹種を考え合わせて、トサカグンバイの翅ではないかと思っています。トサカグンバイはアセビを好んで吸汁するそうで、この樹種は三瓶演習林に多く自生していますから。けれど、同属(Stephanitis属)内にはとてもよく似た種がいるので、翅だけで断定はできません。

同じ6月の別地点のリターでは、別種のグンバイムシも見られました。
こちらの翅は英名のlace bugの名により近い雰囲気を持っているように感じます。背景が白いと分かりづらいので、黒くしてみると、白っぽいグンバイムシの姿が浮き上がってきました。
細かいギザギザの縁取りがある、レース編みで作られたかのような翅を纏っています。翅だけでなく、胸部から横に大きく張り出した翼状の部分も、まるでヨーロッパの貴族の肖像画で見かける大きなレースの襟のよう。なるほどね、呼び名に納得、lace bug(レースバグ)!!
グンバイムシは害虫くんの一面もありますが、和名の由来になった体のカタチにしても、英名の由来になった翅の模様にしても、ユニークさにおいては格別ではないでしょうか。


さて、この白っぽいグンバイムシは、おそらくアワダチソウグンバイではないかと思います。ほんの四半世紀ほど前に移入が確認された北米原産の外来種で、同じく北米原産の侵略的外来種であるセイタカアワダチソウを好んで吸汁するとのこと。一方で、一部の農作物にも吸汁被害を出すそうです。
この虫がいるということは演習林付近にもセイタカアワダチソウが生えているのでしょうか?
けれど、林縁や道脇、林内のギャップならともかく、リターの回収を行っているのは広葉樹二次林の中。いくら繁殖力旺盛なセイタカアワダチソウといえど適した環境ではありません。他のキク科植物にもつくそうなので、そちらからきたのかもしれませんが、いずれにしても寄主植物に心当たりがなく、どうして入っていたのかは分かりません。
ちょっと不安が残る発見ではありました。三瓶の自然環境への悪い兆候ではありませんように。


最後に、素人の拙い思いつきではありますが、研究材料としてのグンバイムシについて書きます。
先ず、グンバイムシの種類を調べる中で、かなり多くの種が寄主である植物の名を冠した種名であることが印象的でした。

(例・ツツジグンバイ、ナシグンバイ、プラタナスグンバイなど)

その理由は、どうやら彼らの寄主特異性が非常に高く、単食性や狭食性であるという性質からきているようでした。こういう生き物は、寄主植物の分布によって自らの分布(移動)をかなり制限されるはずです。
しかも、相当に小さい昆虫ですから、グンバイムシ自身の飛翔能力もそんなには高いとは思えません。
一方で風には運ばれやすいかもしれませんが…
移動を制限されると、離れた寄主植物上の同種との繁殖にも影響が出るでしょうから、寄種植物間の距離の違いによる近親交配の度合いとか調べたら面白いかもしれないなぁ、などと思いました。

グンバイムシは細かくて見つけるのが大変というのはありますが、その分、フィールドは狭くて良さそうなので体力勝負よりは観察が得意な学生さんには向く研究材料かもしれません。
森林や農作物や昆虫分野の学生さん、誰か卒論や修論でやらないかなぁ…。
もちろん素人のつぶやきなので、研究材料にする場合はちゃんと指導教官の方と話し合ってから、ですが(笑)

(※)翅室 昆虫の翅の表面にある網目状のすじの部分(翅脈)に囲まれた部分のこと
(※)グンバイムシが見つかったリター 20190606 50-30/90-10


スタッフS