2025年6月13日金曜日

知られざるリターフォールの博物誌(5)  三瓶にてトゲアリの行列に遭遇する

5月下旬のこと、フィールドワークのために三瓶演習林へ行ってきました。

毎月2回リターを回収している森林動態長期モニタリングサイトにて、サンプルの回収作業をしながら動き回ること数時間。

この時期は林床のあちこちで、咲き終わったハクウンボクの白い花にうっすら覆われている場所を見かけます。


見上げると、丸みのある新緑の葉をつけて広がるハクウンボクの梢が、空からの光を通してとても鮮やか。森の中にいるのが気持ちの良い季節です。


ふと足元の倒木に目をやった私は、そこを行き交うアリたちに気づきました。
「あっ、もしかしてトゲアリ…」


しっかり見直してトゲアリであることを確認しました。
今まで三瓶演習林から回収されてくるリターを乾燥させて分類するだけだった私は、死んだトゲアリしか見たことがありませんでした。死んだ昆虫は形態をじっくり観察するにはいいのですが、当然、精彩や躍動といった要素は失われてしまっているので、生きている姿に会いたいと思っていました。目の前にいるのは、まさしく生きて活動しているトゲアリです。

すっかり感動した私は、作業終了後に改めてトゲアリ観察に行きました。
倒木に沿って寝そべり、粘ること数十分。
この記事に掲載しているのは、ブレたりボケたりの失敗を繰り返しながら、やっと撮影できた動画や写真です。

★トゲアリの動画
森の中で人知れず活動する彼らの様子を見ていると、穏やかな気持ちになれました。
生きものを観察するということは、心に焦りや苛立ちがあるとうまくいかないことが多いと思います。でも、よく見たい知りたいという気持ちに素直にしたがっていると、やがて心も落ち着いてくるように感じます。

新緑の美しい三瓶の森や生きたトゲアリとの出会いを通して、英気を養うことができた一日でした。

スタッフS


2025年2月21日金曜日

仁摩の珪化木を見に行ってみました その2

 前回投稿では、仁摩の珪化木へ坂灘海岸から行こうとして断念したことを書きました。

そこで、今度はチーナカ豆さんのブログにあった別ルートを探してみました。

このGoogleマップでいいますと、坂灘古墳とある辺りから潮川を遡る方向へ進んで2本目の橋を右折します。


その道をずっと行きますと、上の地図で「配水場」とあるところの道沿いに、珪化木についての案内板が立っていました。


仁摩の珪化木についての説明が書かれています。


この看板と配水場入り口の間にある歩道を行くといいようです。


この道を下って行くと…


海が見えて来ました。以前は急坂で大変だったのでしょうが、今は階段が整備されていました。これはありがたいです。


砂浜に出ました。この奥の方に珪化木があるのでしょう。


ここもやはり干潮の時に来る必要がありそうです。


崖はグリーンタフ(緑色凝灰岩)でできていました。


この磯の平らな部分の一番奥まで行くと、大きな珪化木がありました。

矢印と字で示したところ(小さくてわかりにくいかもしれませんが)は、前回投稿で断念した地点です。


大きくて、迫力があります。


戻る途中、こんなグリーンタフのかまくらのようなところがありました。

(他にもこのように掘れているところがありました。グリーンタフは柔らかい岩質なんでしょうか。それにしても、どのようにしてこうなったのか。)


そして、この「かまくら」の下にも珪化木(ですよね?)がありました。これはさっきのと違って、数十cmですけど。


この辺りは海中の石もグリーンタフですね。


さらに戻って行きます。奥に小さく先程の階段が見えています。


この平らな磯の中央付近にも大きな珪化木がありました。行く時には見落としていました…


さらに戻って砂浜の近くに、こんなのもありました。岩に埋もれているので、これも珪化木なんでしょうね。


おまけとして、砂浜に戻ると、こんな岩が。中の丸い石が波で動かされ、その周りを彫ったんでしょうかね。


というわけで、ようやく前から見たかった珪化木を見ることができました。演習林ブログですが、そこはまあ木の話には違いないということで、ご容赦を。

見に行かれる方は、くれぐれも天気と潮位に気をつけてお出かけくださいね。海が荒れている時、潮位が上がっている時は危ないですから。また、崖にも寄らない方がいいでしょう。

2025年2月18日火曜日

仁摩の珪化木を見に行ってみました その1

先日、大田市は仁摩の珪化木を見に行ってみました。

[リンク]石見の火山が伝える悠久の歴史 仁万の硅化木


同じく大田市は波根にある珪化木は見に行ったことがあります。が、仁摩の珪化木については、「ここ、どう行ったらいいんだ…」という感じで、なかなか行けずにいました。

[リンク]「仁万の珪化木」に行ってみた。 チーナカ豆

話がずれますが、琴ヶ浜にある「チーナカ豆」はいい店です。


さて、そのどう行ったらいいかわからない仁摩の珪化木、まずは坂灘海岸から行ってみました。

この海岸には何度か来たことがあります。

河口付近は石の浜で、木の化石が落ちていることがあります。また、ホシフグがたくさん打ち上げられていたことがありましたし、アオイガイを拾ったこともあります。

何台か車を停められるスペースがありますので、そこに車を停め、浜に降りてみました。この浜を写真奥に向かって歩いて行きます。


途中、こういう岩石でできた岩場があります。これは火山性の岩なのでしょうか。白い筋が入っている岩もあります。(背景に見えているのが坂灘海岸です)


その筋をよく見てみると、石英のようでした。


こんな穴もありました。人工のものではなさそうでしたが、どうやってできるんでしょうね、こういう穴は。


さらに進んで行くと、砂浜と平らな岩場に出ます。

島根ジオサイト100選(石見地方)」の説明からしますと、ここが「仁摩の火道」と呼ばれるところなのでしょう。2000万年前頃の火山の火道(マグマが地表に出る通り道)だったそうです。


火道にあたる波食棚をつくる黒っぽい岩のほかに、こういう薄緑色の岩も多く見られます。


これは緑色凝灰岩(グリーンタフ)というものだそうです。火山灰中の鉱物が熱水によって緑泥石に変質することにより緑色になっているとのこと。

次の写真で、左側には海に向かって突き出ている緑色凝灰岩があり、その右側には黒っぽい岩の波食棚があります。ここが火道の境目のようです。


で、肝心の珪化木はどうなったかと言いますと…次回の投稿をお待ちください。

ここからさらに奥に行かないといけないのですが、傾斜のきつい岩場を海に落ちないように歩いて行かないといけなくて危険でしたので、ここからのアクセスは断念し、別ルートを探すことにしました。

ちなみに、干潮の時を狙って来ないと、ここも来れなさそうですよ。

(つづく)

2025年1月17日金曜日

新年のご挨拶 2025年

 

明けましておめでとうございます。

今年の干支は「巳」。

ヘビは古今東西にわたり、神様の化身や使いとして、一方ではヤマタノオロチやメドゥーサのような怪物として神話や伝説に登場し、人類の文化に影響を与えてきました。

自然界においても、ヘビに擬態して身を守る生きものは、たくさんいるようです。

アケビコノハの幼虫やジャノメチョウの仲間は、体によく目立つ蛇の目模様を持っているし、ビロードスズメガの幼虫にいたっては体全体がヘビそっくりです。

ヘビは、人間界、自然界の両方で影響力のある生きものなのですね。

写真は、数年前の7月下旬に三瓶演習林で撮った二匹のマムシです。
林道脇すぐの草むらで見通しもよかったので安全な場所からしばらく観察していました。

ちょうどマムシの繁殖期だったのでしょうか。
手前で淡く光るクモの巣は半透明の帳のよう。その奥で二匹のヘビが滑らかに絡まりあう様子は、どことなく艶めかしさを感じさせました。


今年もよき一年となりますように。

演習林の様子をお伝えするお便りが、忙しい皆さまのささやかな発見や息抜きとなることを願っています。

スタッフS